わーとり

□何味?
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賑やかさから少し外れた神社の境内へとあがる階段に腰掛けた。

慣れない下駄では長時間歩くのは難しい。

そのはずなのに、目の前の私の彼氏はまったく疲れた様子を見せない。



「いいから座れ、疲れただろ」



涼しい顔をした篤は浴衣を肩までまくり、どこか慣れている様子だった。

そのまましゃがんで、器用に私の下駄を脱がす。



「痛いか?皮が剥けてる」

「ん、ちょっとだけ休憩」



あまり表情の変わらない篤からは考えられないくらい手馴れていて、複雑な気持ちになる。

これ、他の女の子にもしたのかな。

私がこうなることを分かっていたのか、篤は用意してあった絆創膏を足に貼ってくれた。

そして立ち上がると、私に荷物を預けていく。



「待ってろ、少しだけ」

「えっ」



どこへ行くのかと問い掛けようとした頃には縁日の喧騒の中にいた。

さすがボーダー隊員。

足は速かった。

少し待っていると、少しだけ駆け足で篤が戻ってきた。



「待たせた」



そして篤は私の目の前に真っ白なものを差し出す。

あまりにも距離が近くて何だか分からなかったけど、ゆっくり焦点を合わせる。



「あ、綿あめ!」

「買ってきた。好きかと思って」



よく見ると、もう一方の篤の手にも綿あめが握られている。

しかし、色がほんのり違う。



「そっちは?ピンク色に見える」



私はピンクの綿あめに視線を送ると、少しだけ残念そうに篤はそちらを私に差し出す。



「食べるか?いちご味」



先程の残念そうな顔を思い出す。

篤がいちご味を食べたかったのではないだろうか。



「でも、篤が食べたかったんじゃないの?」

「別にいい、ごんべさんが食べろ」



いちご味の綿あめを差し出すので、私は少しだけ渋々と受け取る。

いつまでも微妙な顔をするのも申し訳ないので、私は美味しくいただくことにした。

ぱくりと一口食べれば、口の中に綿あめ特有のじんわりと溶けていく感覚の中にほんのりいちごの香りがした。



「……おいしい!」



勢いのよく篤を見上げれば、ふわりと篤が笑った。



「良かった。俺もいただくぜ、いちご味」



気付けばお互いの唇が触れ合っていた。

予想外の出来事に固まっていれば、篤の舌が私の口内へと入り込んで侵していく。

歯列をなぞるように、何度も念入りに舌が絡められる。

どれくらいそうしていたのか、やっとの思いでお互いに離れると、篤はにやりと口角をつり上げる。

そして意味深にこちらを見て、舌舐めずりをした。



「美味しかった、ご馳走様」



























お話の切り方が雑!笑
お祭り慣れしてる穂刈は下駄でも難なく長時間歩いてそうでかっこいい。

2015.08.24 更新

 

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